M&A入門

はじめてのM&A 〜M&Aの基本〜

 

M&Aとは?

M&A(Merger and Acquisition)とは、合併と買収という意味です。中小企業庁では、「会社そのものを売り買いすること」と明示されていますが、正確には、「会社だけではなく、事業も切り売りできる」ということになります。M&Aは企業の永続や発展のための経営戦略の手法であると言えます。昨今では、ハッピーリタイヤなど、M&Aは非常に優れた手法だということが認識されつつあります。

まずは、アメリカと日本におけるM&Aの歴史を振り返ってみましょう。

アメリカでは1800年代に水平統合、垂直統合が始まりました。水平統合は、製鉄会社が製鉄会社を買収することで、垂直統合とは、医薬品卸が調剤薬局を始めたり、調剤薬局がメーカーを買収するという事例があります。

そして、M&A にはLBO(Leveraged Buyout)という手法もあります。これは、自社よりも大きな会社を買うために借入をする場合、買収先の信用力を活かして借入を起こすという仕組みです。以前、ソフトバンクがボーダフォンやスプリントを買収した際に、1兆円という膨大な借入は自社能力だけではできないため、相手先の信用力を活かして借入するというLBOを利用したと言われています。

日本でも1920年代に製鉄会社や製紙会社の大型合併が始まり、11990年から2000年にかけて、M&Aが頻繁に行われるようになり、国内企業が海外企業を買収するなど、M&Aがマネーゲーム化してきました。

M&Aのメリット

次に、M&Aのメリットを見てみましょう。

買い手のメリットは事業規模の拡大です。例えば、薬局卸であれば調剤薬局を買収することで、事業規模の拡大ができ、技術力や販売力の獲得、新規立ち上げのリスク軽減にも繋がります。一方で、売り手のメリットは創業者利益や連帯保証の解消、税制メリットが挙げられます。

M&Aにより株を譲渡した場合、その株式の譲渡益に対して20%だけで税金が済みますが、仮に、M&Aをせずに役員報酬を取り続けた場合、所得税と住民税がかかり、30%から50%ほどの税金を取られてしまうということになります。そのため、M&Aでの税制メリットは大きいと言えます。

M&Aのリスク要因、デメリット

次に、M&Aによるデメリットを見てみましょう。

売り手としては、1円でも高く売りたい、一つでもいい条件を引き出したいというのが当然ですから、満足できる相手を見つかるかどうか、そして、労働者条件の変更に関しても、譲渡後に従業員の給料や待遇が変更されるケースや、旧経営者の立場がなくなることも考えられます。

一方で、買い手のデメリットは、簿外債務や粉飾決算が発生するリスクがあるということです。ドラッグストアによく見られますが、帳簿に、在庫は1億と記載があったが、実際は2,000万しかないなど、売掛金と買掛金に相違があるというリスクを引き継いでしまう可能性があるということです。そして、過去のことで訴えられるというリスクもあります。これらのデメリットに関しては、株式譲渡の契約書のなかで、簿外債務が生じた場合の保険条項を追加しておくなどの対策で回避することは可能です。

さらに、M&Aの難しさとしては、譲渡後に従業員の不協和や優秀な人材が抜けてしまうなどして、事業計画を大幅に見直さなければならない事態も発生します。実際に、買収金額が高すぎたことや、業務効率化が図れなかったこと、人材融合できなかったことなどの理由で、うまくいかないケースも少なくありません。