M&A事例

M&A成功事例①

M&Aで得た利益で借金返済

債務超過状態にある会社は、中小企業再生支援協議会を利用し、債務放棄するとともに、M&Aで事業再生するという需要も増えています。建築設備事業を営む会社の例ですが、大株主は80歳の父親でしたが、高齢ということで、38歳の息子さんが社長に就任しました。就任後間もなく、債務超過に加えて、決算粉飾が発覚し、従業員に賞与も支払えず、コンサルティング会社に相談したところ、中小企業再生支援協議会を利用した財務圧縮と、M&Aによって事業再生することを提案されたそうです。

事業再生のスキームを決め、好調な事業だけを売却し、新会社を設立。そして、従来の会社が新会社の株式を100%保持し、業績好調な事業を新会社に引き継がせ、そのうえでM&Aを実施し、新会社の株式をスポンサー譲渡する方針にしました。スポンサーも傘下に入った新会社は、好業績事業を継続しますので、従来の会社は株式の譲渡対価を得ることができ、その資金で債務の返済にあてることができました。

社長には自分の責任で会社を再生させるという強い意志があったため、社長続投と従業員継続雇用という条件で、最も好条件を出してきた投資ファンドと契約し、M&Aを実施することで、見事にV字回復を遂げた例になります。

事業を譲渡し赤字会社を円満に精算

後継者不足や赤字経営などの理由で廃業を考えている会社の場合、M&Aで取引先や事業を残し、社員の雇用を守ることができます。例えば、年商8億円の機械卸業を営む65歳の社長さんは、人件費高騰などで債務超過に陥る危機があり、このままでは廃業するための資金すら払えないということで、M&Aで同業他社に事業譲渡することを決意しました。買い手を募集したところ、売り手と同業でそのビジネスに精通している同業他社が名乗りをあげ、そこに事業譲渡できれば、人材や販路の共有などで売り先が伸びることもあり、お互いにとってメリットがあるということで契約は進み、人とビジネスだけを譲渡し、譲渡対価で残りのビジネスを清算することができました。

本来、経営が苦しくなれば、廃業を考えがちですが、M&Aすることで、買い手企業にとっても、廃業するはずだった企業から人材や取引先を獲得できるというメリットもあり、廃業する会社にとっても、譲渡対価が入り、精算資金にあてることができますので、ただ廃業するよりはM&Aを実行することをおすすめします。

契約が頓挫した場合でも信頼関係で再構築

後継者不足によりM&Aを望んでいた建設会社の社長さんがいましたが、契約直前に、M&Aはやっぱり嫌だということで白紙撤回になりました。しかし、1年後に、社長の健康状態を心配した周囲の会社が、コンサルティング会社に相談し、社長にもう一度M&Aの意向と確認すると、元気なうちに会社を売りたいという希望がありました。その後、買い手企業を募集したところ、前回破断になった企業が好条件を出してきたため、前回の破断理由を社長に聞いたところ、自分の趣味である旅館事業まで受け渡したくないということが判明しました。

旅館事業だけを分割しようにも、不認可事業であることから、分割手続きに1カ月半の時間がかかり、時間がかかれば、また社長の意向が変わってしまうことを危惧しました。そこで、M&Aと並行して、旅館事業を本業から分割する手続きを進め、分割許可が下りた時点で、すぐに買い手企業から買い戻すかたちを選択しました。

そして、面談を重ねるうちに、社長と買い手企業との信頼関係も再構築され、わずか2カ月で最終契約にたどり着けました。

M&Aは企業同士のお見合いのようなものですので、ご縁があれば、白紙になっても、再度、信頼関係を取り戻すことは可能です。

契約直前に問題が発生

親族内で事業承継を考えていたところ、何らかの理由でできなくなり、M&Aを選択するケースも増えています。特殊系石器メーカーの事例ですが、息子への事業承継を考えており、将来的に息子へ株式を移転しやすいようにホールディング化し、二つある事業をそれぞれ子会社にすることを決めました。ニッチで需要がある製品ということもあり、業績は好調で海外進出も果たしている会社でしたが、会社が大きくなるにつれて、息子に任せるには荷が重いと考えましたが、社内に後継者にふさわしい人物はいませんでした。コンサルティング会社に相談し、事業を第三者に承継するために、M&Aを数社に打診したところ、同業製品を扱う会社とのM&Aは断り、新規分野進出に意欲的な上場企業と独占交渉を始めることになりました。

M&Aを進めていくなかで、自社が窓口となり販売した他社製品の販売先企業で事故が起きてしまい、上場企業である買い手側から、訴訟リスクのある会社の買収はできないと言われ、M&Aが破断の危機に陥りました。自社が販売した製品ではないため、事故の責任は問われないにも関わらず、賠償金額を損害賠償契約のうち10%を支払うことで、再度M&Aの話が進み始めたのですが、契約締結直前に、社員持ち株会の解散手続きが終わっていないことが判明し、また一難ありましたが、単なる手続きミスということで無事にM&Aが成立しました。

M&Aを実行する過程で問題が発生することはありますので、発生した問題に素早く対応し解決することが重要になります。