M&A入門

M&Aにかかる税金は?

会社の売り方によって、税金は変わる

会社を売るか続けるか金額面を比較する際は、税金も考慮する必要があります。例えば、M&Aにより、出資金1,000万円で設立した会社を5億円で売却した場合、税金は9,800万円かかり、手取り額は4億200万円となります。一方で、毎年5,000万円の給与を10年得た場合、年間の所得税と住民税は1,900万円となり、10年間では同じ5億円でも、税金は1億9,000万円かかり、手取り額は3億1,000万円と、M&Aで売却した場合よりも、約9,000万円も少なくなります。

M&Aは税金面でも優遇されていますので、売るのか続けるのか迷ったときは、単純な比較ではなく、税金も比較することが必要です。

株式譲渡にかかる税金

株式譲渡はM&Aの売り手企業の株主が、買い手の株式を売却し、売却代金を手にするため、課税対象は、売却代金を受け取った元株主になりますが、元株主が個人であれば、株式売却での儲けは譲渡所得に対して取得税がかかります。

売却した翌年の確定申告で納税しますが、譲渡所得にかかる取得税は分離税式のため、税率が一定で高額所得者でも納税額を抑えられるというメリットがあります。

住民税は、原則給与から天引きされますが、確定申告で普通徴収を選択された方は、株式を売却した翌年の6月に納付書が届きますので、資金の確保が必要です。

事業譲渡にかかる税金

事業譲渡は、売り手企業が買い手企業の事業に関わる資産を売却するというもので、売却代金は売り手企業が受け取り、これによる儲けが法人税の課税対象となります。事業譲渡の場合は、譲渡資産のうち消費税対象となるものは消費税が課税されます。M&A交渉途中で事業譲渡に切り替える場合は、消費税の資金計画に変更が生じますので注意が必要です。

また、譲渡資産に不動産が含まれている場合は、買い手側で名義変更のための登録免許税と不動産取得税の負担もあります。

また、M&Aでは、株式譲渡や事業譲渡以外にも、組織再編行為という手法もあり、売り手側が受け取る対価は現金ではなく、買い手企業の株式になることが多いことが特徴です。企業再編が税制適格要件に該当するかどうかで課税されるか決まりますので、非適格組織再編となる場合は、株式や譲渡代償会社はそれぞれに課税が生じる可能性もあるので注意が必要です。